フェズ旧市街の狭い路地裏で、頭上の革製品の下に立ち、目元以外をベールで覆って佇む女性の姿

町角に佇む女
フェズ・エル・バリに佇む女性

モロッコが誇る最古の王都フェズに足を踏み入れた。この街の旧市街(フェズ・エル・バリ)は、世界有数の迷宮都市として名高い。細い路地が網の目のように複雑に入り組んでおり、その数は実に九千以上もある。道幅があまりに狭いため、排気ガスを撒き散らす自動車は一切進入することができない。その代わり、ここでは古くから「ロバ」が唯一の運送手段として大活躍している。ロバが重い荷物を背負ってやって来ると、人々は「バラック!(あけてくれ!)」と大声を張り上げて道を譲る。そんな人間とロバが絶え間なく行き交う騒々しい路地を、僕は迷子にならぬよう歩いていた。

著者 : 宮本薫
イカロス出版
発売日 : 2019-02-25

そのロバと人が押し合いへし合いする騒々しい路地を進んでいくと、軒下のわずかな日陰に、一人の女性がぽつねんと立っているのが見えた。彼女は、目元だけをわずかに露出させて、顔のほとんどを布で覆い隠している。これはイスラム教徒の女性が身につける伝統的な装束で、頭を覆うのが「ヒジャブ」、顔を覆うのが「ニカブ」などと呼ばれ、地域や宗派によって細かく仕様が変わるらしい。露出された目元だけが、通りを行き交う人波を静かに追いかけている。彼女は周囲のけたたましい喧騒とは完全に切り離されたかのように、ただじっと無言で佇んでいた。

その周囲のけたたましい喧騒から取り残されたかのように佇む彼女の横顔を、僕はすれ違いざまにそっと覗き込んだ。彼女の頭上には、この街の特産品であるフェズ革(モロッコ革)で作られたハンドバッグのようなものがぶら下がっている。この革はヤギやヒツジの皮を伝統的な技法でなめしたもので、非常にしなやかで美しい。そんな名産品の下で、行き交う男たちの影に紛れながら、彼女は身動きひとつしなかった。

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ENGLISH
2010年6月 モロッコ 人びと
人集り 軒先 フェズ ヒジャブ 旧市街 女性

PHOTO DATA

No

4207

撮影年月

2009年12月

投稿日

2010年06月13日

更新日

2026年07月16日

撮影場所

フェズ / モロッコ

ジャンル

スナップ写真

カメラ

CANON EOS 1V

レンズ

EF85MM F1.2L II USM

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