ネパールの首都であるカトマンズの路地を、あてもなく歩いていた。土埃が舞う喧騒の通りに鉄格子のフェンスがそっけなく立っている。そのフェンスの前に、ひとりの男の子がぺたりと腰を下ろしていた。カメラを向けると、彼は人懐っこく少しはにかんだように微笑んでくれた。胸にロゴの入ったTシャツを着て、ただぼんやりと座っている。彼がそこで誰かを待っているのか、あるいは何も待っていないのかは分からない。ただ、何をするでもなくフェンスに腰を下ろしているだけである。
何をするでもなく道端に腰を下ろしているのは、決してこの男の子だけではない。カトマンズの街角を見渡せば、大人も子どもも、男という男はそこら中でダラダラとたむろしている。道端で甘いチヤ(ネパール風のミルクティー)をすすりながら、日がな一日おしゃべりに興じているのだ。ネパールには伝統的な家父長制の意識が根強く残っているということをどこかで聞いたことがある。そうした背景があるからか、こうして白昼堂々と道端で寛ぐのは、どうやらこの国では男だけに許された特権のようだ。
その男だけに許された特権を享受してダラダラしている間、女性たちは一体どこで何をしているのだろうか。通りを歩いていても、のんびりしている女性の姿はあまり見かけない。この世界ではジェンダーロールがひどく明確に決められている。男たちが外で無駄な時間を浪費している間も、女性たちは家庭内で家事や労働に追われ、せわしなく立ち回っているのだろう。男がサボっている裏で女が働くという構図は、どこか滑稽だが笑えない現実である。
| 2009年11月 ネパール 人びと | |
| 男の子 塀 カトマンズ Tシャツ |
No
3348
撮影年月
2009年6月
投稿日
2009年11月06日
更新日
2026年05月18日
撮影場所
カトマンズ / ネパール
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM