カトマンズの埃っぽい街角を当てもなく歩いていると、鉄格子に囲まれた小さなヒンドゥー教の寺院にぶつかった。この街には至る所に似たような寺院が建っている。なんでも、人間よりも多くの神様が住む街と呼ばれているらしい。神様が多すぎるというのも、人間にとってはかえって窮屈な話である。そんな窮屈な街の通り道に建つ寺院の入り口に、一人の女性が気怠そうに立っていた。
その気怠そうに立っていた女性は、片手を後ろに回して、ポリポリと背中を掻きながら遠くをぼんやりと眺めている。神様を祀る神聖な場所の入り口だというのに、彼女の立ち振る舞いからは荘厳さや静謐さなど微塵も感じられない。しかし、それがいいのである。お高くとまった宗教施設よりも、こうして人間の生活臭や都会の喧騒にすっかり溶け込んでいる方が、よほど風通しが良くて心地よい。
そのよほど風通しが良くて心地よい寺院の屋根を見上げてみると、上から金属製の帯状のものがだらりとぶら下げられていることに気がつく。これは「ドバジャ」と呼ばれるもので、トーラナやトゥンダール、ガジュールといった装飾と並ぶ、ネパールの寺院建築における厄介な特徴のひとつだという。なんでも、天から神様が降臨してくるときの道筋を示すシンボルなのだという。
その道筋を示すシンボルの下で、人間の女性が無防備に背中を掻いている。もし今、神様がこの帯を伝って降りてきたら、彼女のその間の抜けた姿を見てさぞかし呆れることだろう。そんな神様と人間の絶妙な距離感を想像すると、なんだか可笑しかった。
| 2009年11月 町角 ネパール | |
| ヒンドゥー教 カトマンズ 寺院 女性 |
No
3349
撮影年月
2009年6月
投稿日
2009年11月06日
更新日
2026年05月18日
撮影場所
カトマンズ / ネパール
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM