井の頭公園を歩いていると、池の真ん中に一本の立て札が見えた。水面にぽつんと浮かぶようにして、まるで孤島の灯台のようだ。近くまで行こうにも、そこはボートでも漕がない限り辿り着けない。そもそも、そこまでして読むほどの内容でもない気がする。だが、こうして誰の目にも遠くから見える場所に設置されている以上、何か重要なことが書いてあるのだろう。たとえば「立入禁止」だとか、「魚を捕るな」だとか。だが、それを確認する術はない。おそらく、立て札を読むために池へ入れば、その瞬間に“立入禁止”の違反者になるのだろう。
井の頭池は江戸時代から人々の憩いの場として知られ、かつては神田上水の水源でもあった。東京の歴史を陰で支えてきたこの池も、今ではボート乗り場とデートスポットの象徴である。だが、池の中央に立つこの立て札だけは、そんなロマンチックな風景とは無縁だ。風に吹かれて微かに揺れるその姿は、どこか不機嫌そうにも見える。
| 2011年9月 町角 東京 | |
| 吉祥寺 公園 池 |
No
5691
撮影年月
2011年6月
投稿日
2011年09月07日
更新日
2025年10月29日
撮影場所
吉祥寺 / 東京
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
OLYMPUS PEN E-P2
レンズ
M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42MM