世界遺産にも登録されている琉球王朝一番の聖地、斎場御嶽(せーふぁうたき)は、沖縄本島南部の海を見下ろす高台にある。岩と森が絡み合うようなその聖域には、神話の時代から「神が降り立つ場所」として崇められてきたそうだ。観光客が増えた今では、立ち入りを制限しているエリアも多い。それでもなお、この場所にはどこか他の土地にはない「気配」が漂っている。
森の切れ目から見える海は、ため息が出るほど青い。見渡す限り水平線まで続いており、雲が影を落とすたびに、その青の濃淡がゆっくりと変化する。あの柔らかな雲の下には、琉球の人々が信じた「ニライカナイ」があるのだという。神々が暮らす理想郷。だが、これほど見晴らしの良い場所からなら、神々も人間の様子がよく見えて、さぞや退屈しないことだろう。
もっとも、神がこの海を造ったのか、海が神を生んだのかは誰にもわからない。日差しの強さと潮風のしょっぱさが入り混じり、思考が少し朦朧としてくる。観光パンフレットの言葉はどうでもよくなり、ただ雲の動きをぼんやり追ってしまう。こうして見ると、沖縄の空と海とは、どちらが主でどちらが従なのか判然としない。神聖というより、よくできた自然の偶然である。
| 2007年7月 自然 沖縄 | |
| 雲 南城市 海 水平線 空 |
No
985
撮影年月
2007年6月
投稿日
2007年07月28日
更新日
2025年11月26日
撮影場所
南城 / 沖縄
ジャンル
風景写真
カメラ
RICOH GR DIGITAL