韓国の東海岸を北上し、束草の街を徘徊していた。歩いているうちに、屋上に太極旗がはためく立派な建物の前に出た。中央の国旗の四隅に描かれた黒い模様は「卦(け)」と呼ばれ、天地日月を表しているらしい。そんな厳かな旗の下、建物の壁面にはハングルで何やら大仰なスローガンが掲げられている。文字が読めない僕でも、建物の佇まいや旗の様子から、ここがこの街の市役所であることくらいは見当がついた。しかし、それ以上に何が起きているのかさっぱり見当がつかないのは、その玄関前にむらがっている大勢の人々であった。
その玄関前にむらがっている大勢の人々は、手に手に四角いプラカードを掲げて気勢を上げていた。どうやら何かのデモの真っ最中であるらしい。韓国という国は世論のエネルギーが凄まじく、事あるごとにこうして集まって声を上げるお国柄だ。彼らが持っているプラカードを凝視してみたが、並んでいるのは記号のようなハングルばかりで、やはり内容がさっぱり読み解けない。15世紀に世宗大王が作ったこの文字は、子音と母音を組み合わせる極めて合理的な仕組みなのだが、読めない人間にとってはただの暗号の羅列に過ぎないのだ。
ただの暗号の羅列に過ぎないプラカードを前にして、僕は彼らが一体何に対して怒っているのか、その理由をあれこれと妄想してみることにした。市役所の景観を損ねるような派手な看板に怒っているのか、それとも単に今日の昼飯のメニューに不満があるのか。ハングルが読める人が見れば一目瞭然なのだろうが、言葉の通じない僕にとっては、彼らの怒りの表情すらどこか滑稽な芝居のように見えてきてしまうから要注意だ。
| 2008年10月 町角 韓国 | |
| 市庁舎 デモ プラカード 束草 |
No
2109
撮影年月
2008年6月
投稿日
2008年10月16日
更新日
2026年06月10日
撮影場所
束草 / 韓国
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM