ムンバイの道端で三人の男の子と行き合った。インドの大都市らしい喧噪の中、埃っぽい通りを歩いていると、彼らはまるで最初からカメラに収まることを狙っていたかのように、こちらに笑顔を向けてきた。僕が首から提げていた一眼レフが珍しかったのか、あるいは退屈を紛らわすための格好の遊び道具に見えたのかもしれない。いずれにせよ、レンズを向けると三人は瞬時に役割を決めたように、それぞれ異なる顔を作ってくれた。
左に立つ男の子は柔らかな笑みを浮かべ、妙に大人びた落ち着きを漂わせていた。真ん中の男の子は片目をつぶって歯を見せ、まさにいたずらっぽい表情でファインダーを覗き返してくる。その笑いは、こちらが真剣に撮ろうとすればするほど肩透かしを食らわせるような悪戯心に満ちていた。そして右端の男の子は、挑戦的とも言える鋭い目つきでカメラをにらみつけ、あたかも写真を通して勝負を挑んでいるかのようだった。
三者三様の表情が一枚に収まると、まるで古典的な寓話の挿絵のような不思議な迫力を帯びてくる。インドの写真ではよく「視線が強い」と言われるが、それは単なる偶然ではなく、こうして街角で出会う子どもたちの即興の演技力によるものなのだろう。後から考えれば、彼らは誰に教わったわけでもなく、日常の中で人の目を引く術を自然に身につけているのだ。ムンバイという都市が持つ雑踏のエネルギーが、男の子たちの表情にまで浸透しているのかもしれない。
2011年3月 インド 人びと | |
男の子 顔 幸せ ムンバイ 戯ける 三人組 |
No
5250
撮影年月
2010年9月
投稿日
2011年03月02日
更新日
2025年09月09日
撮影場所
ムンバイ / インド
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM