日本には老害なんていうひどい言葉がある。しかし、同じ漢字文化圏でも中国語で「老街」と書けば、それは単なる旧市街を意味する。漢字の並びだけで意味が通じるのは便利だが、受ける印象は随分と違うものだ。そんなことを考えながら、僕は台湾の北部にある三峡という街を歩いていた。ここには日本統治時代にあたる大正期に建てられたという、赤レンガの立派な町並みが残っている。建物の造りをよく見ると、一階部分が後退して歩道になった「騎楼(亭仔脚)」と呼ばれるアーケード状の構造になっている。雨の多い南国で、歩行者が濡れずに済むように工夫された実用的な建築様式で東南アジアでもしばしば見かける。
その実用的な建築様式である薄暗い騎楼の通路を、ふらふらと歩いていた。通りはちょうど、観光地化に向けた大掛かりなリノベーションの真っ最中であった。小綺麗に生まれ変わる準備とでも言うべきか、通りのあちらこちらで職人たちがせわしなく働いている。視線の奥の方にも、木製の机や椅子を通路に引っぱり出して作業をしているひとりの男の姿が見えた。頭を少し下げ、黙々と鉋掛けをしている最中のようだ。
その黙々と鉋掛けをしている職人の姿を、僕は少し離れた場所からぼんやりと眺めていた。時代にそぐわなくなった古い町並みというものは、結局のところ、こうして現代風に化粧直しをして観光名所として生き残るしか道はないのだろう。古いものをそのまま放っておけば朽ちていくだけだし、かといってブルドーザーで真っさらにして無機質なビルを建てるのも味気ない。ならば、適当に手を入れて観光客の小銭をかき集めるためのテーマパークとしてリサイクルする方が、よほど健全な算段なのだ。
| 2007年4月 町角 台湾 | |
| 煉瓦 男性 旧市街 通路 三峡 |
No
845
撮影年月
2007年1月
投稿日
2007年04月15日
更新日
2026年05月19日
撮影場所
三峡 / 台湾
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
CANON EOS 1V