貝殻のような奇妙な柄のシャツを着て、カメラをじっと見据える印象的な吊り目の男

つり上がった目をした男
つり上がった目をした男

どうやら、異邦人である僕はバングラデシュの北西部にあるロンプールの町でひどく目立つらしい。この埃っぽい町には、わざわざ足を運ぶような酔狂な外国人があまりいないようだ。通りを歩いていても、他の旅行者らしき姿を見かけることは全くない。南アジアで人口密度が世界トップクラスのこの国では、どこに行っても人間がうじゃうじゃと湧いて出てくる。その無数の地元民の中で、僕のようなよそ者がポツンと歩いているのだから、より一層目立つのは無理もない話だ。歩いている僕に気がついた地元の連中の多くは、露骨な物珍しさからジロジロとこちらを観察し、そして遠慮なく声を掛けてくるのである。

著者 : 石井桃子
福音館書店
発売日 : 2022-04-05

その遠慮なく声を掛けてくる地元の連中の中に、写真の男も混ざっていた。彼もまた、あけすけな好奇心を持て余して僕に話しかけてきた一人である。顔を向けると、男はひどく印象的な吊り目をしていた。その鋭くつり上がった両眼で、カメラを構えた僕の顔をまじまじと、そしてしっかりと見据えているのだ。バングラデシュの人間はベンガル系が多いが、この地域はインドの国境にも近く、様々な民族の血が混ざり合っているらしい。だから、彼のように少し東アジア寄りの顔立ちをした人間がいても不思議ではない。

その不思議ではない東アジア寄りの顔立ちをした男の風体を、僕はファインダー越しにもう少し細かく観察してみた。よく見てみると、男が着ている古びたシャツには、なんとも奇妙なパターンの模様がプリントされている。ホタテのような貝殻のようにも見えるし、ただの幾何学模様のようにも見える。一体何がモチーフなのか、さっぱり見当がつかない。そもそも本人がこの柄の意味を理解して着ているのかどうかも怪しいものだ。古着の流通網に乗ってどこかの国から流れ着いた中古のシャツを、ただそこにあったから適当に羽織っているだけかもしれない。

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ENGLISH
2010年4月 バングラデシュ 人びと
ロンプール つり目 青年

PHOTO DATA

No

3982

撮影年月

2009年9月

投稿日

2010年04月21日

更新日

2026年06月08日

撮影場所

ロンプール / バングラデシュ

ジャンル

ポートレイト写真

カメラ

CANON EOS 1V

レンズ

EF85MM F1.2L II USM

日本国外で撮影した写真

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