どうやら、異邦人である僕はバングラデシュの北西部にあるロンプールの町でひどく目立つらしい。この埃っぽい町には、わざわざ足を運ぶような酔狂な外国人があまりいないようだ。通りを歩いていても、他の旅行者らしき姿を見かけることは全くない。南アジアで人口密度が世界トップクラスのこの国では、どこに行っても人間がうじゃうじゃと湧いて出てくる。その無数の地元民の中で、僕のようなよそ者がポツンと歩いているのだから、より一層目立つのは無理もない話だ。歩いている僕に気がついた地元の連中の多くは、露骨な物珍しさからジロジロとこちらを観察し、そして遠慮なく声を掛けてくるのである。
その遠慮なく声を掛けてくる地元の連中の中に、写真の男も混ざっていた。彼もまた、あけすけな好奇心を持て余して僕に話しかけてきた一人である。顔を向けると、男はひどく印象的な吊り目をしていた。その鋭くつり上がった両眼で、カメラを構えた僕の顔をまじまじと、そしてしっかりと見据えているのだ。バングラデシュの人間はベンガル系が多いが、この地域はインドの国境にも近く、様々な民族の血が混ざり合っているらしい。だから、彼のように少し東アジア寄りの顔立ちをした人間がいても不思議ではない。
その不思議ではない東アジア寄りの顔立ちをした男の風体を、僕はファインダー越しにもう少し細かく観察してみた。よく見てみると、男が着ている古びたシャツには、なんとも奇妙なパターンの模様がプリントされている。ホタテのような貝殻のようにも見えるし、ただの幾何学模様のようにも見える。一体何がモチーフなのか、さっぱり見当がつかない。そもそも本人がこの柄の意味を理解して着ているのかどうかも怪しいものだ。古着の流通網に乗ってどこかの国から流れ着いた中古のシャツを、ただそこにあったから適当に羽織っているだけかもしれない。
| 2010年4月 バングラデシュ 人びと | |
| 顔 ロンプール つり目 青年 |
No
3982
撮影年月
2009年9月
投稿日
2010年04月21日
更新日
2026年06月08日
撮影場所
ロンプール / バングラデシュ
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM