モン族の女性が市場の外に向かって俯きながら歩いていた

俯きながら歩くモン族の女性
市場を歩くモン族の女性

市場は朝もやに包まれていた。ラオス北部のムアンシンという町は、国境に近いこともあって小さな町ながらも交易の拠点として古くから知られている。まだ日が昇りきらないうちから人々は市場に集まり、野菜や果物、布地や生活雑貨を抱えて歩き回っていた。市場という場所は、ただ物を売り買いするだけではなく、村の人々にとっては社交の場でもある。つまり、少々の立ち話と値切り交渉を兼ねた娯楽の場だ。

その雑踏の中にモン族の女性の姿を見つけた。独特の帽子を身に付け、刺繍の入った民族衣装を着ているので、周囲のラオス人の中でも際立って目立つ。モン族は中国南部から移動してきた民族で、ラオスやベトナム、タイなど東南アジア各地に住み、今もなお色鮮やかな刺繍文化を守り続けている。観光客向けの土産物店では高値で売られる刺繍布も、彼女たちにとっては日常の衣装にすぎないのだ。

その女性は俯き加減で歩きながら、大きな布の袋を肩に提げていた。袋の中は、すでに市場で買い集めた野菜や米でいっぱいらしい。市場というと日本人は魚や肉を想像しがちだが、ムアンシンの市場では山岳民族が山菜を並べていたり、竹筒に詰められたもち米を売っていたりするのが特徴的だ。保存技術が未発達な地域では、買ったものはその日のうちに食べるしかない。冷蔵庫のない時代の日本の買い物風景を、ここラオスで不意に思い出さされるのも面白い。

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ENGLISH
2008年3月 ラオス 人びと
モン族 市場 ムアンシン 女性

PHOTO DATA

No

1519

撮影年月

2008年1月

投稿日

2008年03月26日

更新日

2025年08月29日

撮影場所

ムアンシン / ラオス

ジャンル

ストリート・フォトグラフィー

カメラ

CANON EOS 1V

レンズ

EF85MM F1.2L II USM

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