かつてイギリス領インド帝国の首都として栄えた歴史を持つコルカタの街を歩いていた。当時の栄華の面影などどこにもなく、通りはただひたすらに喧騒と熱気で満ちている。そんな混沌とした市場の片隅を当てもなくうろついていると、やたらと暇そうにしている労働者の集団に出くわした。黒いカメラをぶら下げたよそ者が珍しいのか、彼らはわらわらと僕の周りに群がってきたのである。
そのわらわらと僕の周りに群がってきた集団の中で、奇妙な小競り合いが始まった。何故だかはさっぱり分からないが、ひどく嫌がっている一人の男が、周囲の連中によって無理矢理カメラの前に引きずり出されてきたのだ。インドの人間は総じて写真に撮られるのが好きで、頼みもしないのに勝手にポーズを決める輩が多い。しかし、中央に押し出されたこの男はひどくシャイな性格のようだ。シャツの胸元には現地の旅行予約サイトである「make my trip」という陽気なロゴが印字されているのに、本人の顔はまるでこれから処刑されるかのように強張っている。
そのまるで処刑されるかのように強張っている男の後ろで、彼を無理矢理生贄に捧げた仲間たちは無責任に笑い転げている。すぐ背後にいる頭に布を巻いた男などは、他人の不幸が面白くてたまらないといった様子で満面の笑みを浮かべていた。よく見ると布の結び目に造花のような飾りが挿してあり、なんとも人を食ったようなふざけた格好だった。
| 2012年7月 インド 人びと | |
| 恥ずかしがり屋 コルカタ 労働者 笑顔 |
No
6586
撮影年月
2011年6月
投稿日
2012年07月03日
更新日
2026年05月24日
撮影場所
コルカタ / インド
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM