むせ返るような排気ガスの匂いとけたたましいクラクションの音が鳴り響くフィリピンの首都、マニラの通りをあてもなく歩いていた。黒くて無骨なカメラを首からぶら下げたよそ者の姿は、この埃っぽい街角ではどうやらひどく目立つらしい。立ち止まって適当な風景を探していると、どこからともなく三人の男の子がわらわらとやって来た。彼らは僕の持っている機械が珍しいのか、興味津々の様子でジロジロとこちらを窺っている。試しにレンズを向けてみると、三人はぎゅっと身を寄せ合い、なんとも人懐っこい笑顔を浮かべてカメラの前に収まったのである。
そのなんとも人懐っこい笑顔を浮かべてカメラの前に収まった三人のうち、二人はピースサインを作って見せてくれた。この二本指を立てる仕草は、もともと第二次世界大戦中にイギリスのチャーチル首相が勝利(Victory)をアピールするために使ったのが始まりだとも、1960年代の反戦運動が起源だとも言われている。しかし、目の前で無邪気に歯を見せて笑っている彼らが、人類の歴史に思いを馳せたり、世界平和を真剣に願ったりしてこのポーズをとっているわけでは到底ない。
その世界平和を真剣に願っているわけではない二本指のポーズは、つまるところ日本の子どもたちと全く同じである。ただ単にカメラを向けられた時に取る、意味のない条件反射のポーズに過ぎない。かつて日本のテレビコマーシャルなどが発端で広まったとされるこの記号的な仕草が、海を越えた南国の路地裏でも同じように定着しているのが興味深い。
| 2012年7月 人びと フィリピン | |
| 男の子 好奇心 マニラ ピースサイン 笑顔 三人組 |
No
6587
撮影年月
2008年9月
投稿日
2012年07月04日
更新日
2026年05月24日
撮影場所
マニラ / フィリピン
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM