サアチーラの町に着いたとき、教会の前には派手な祭りの準備に駆り出された男の子たちが集まっていた。どうやらここでダンスを披露するらしい。メキシコの地方都市にありがちなことだが、何の祭りなのかは外来者にはさっぱり分からない。宗教的行事なのか、単なる地域の年中行事なのか、区別は曖昧である。もっとも、こちらとしては由来を問うより、目の前で繰り広げられる光景を眺める方が手っ取り早い。
その中に一人、ひときわ大きな羽飾りを載せた帽子を被った男の子がいた。まるで自分の体よりも大きなそれを頭に載せているのだから、歩くだけでも骨が折れるだろう。帽子の下部には鳥の意匠が描かれていた。メキシコの国鳥といえばカラカラであるが、この鳥が果たしてカラカラなのかは判別できない。そもそも、この種の祭りの装飾に登場する鳥は、国鳥だとか渡り鳥だとか、学術的分類とは無縁なことが多い。要するに「格好がつけばよい」という実に大らかな基準である。
ただし、男の子の顔は真剣そのもので、祭りの軽薄さとは裏腹に瞳の奥には妙に沈着な光が宿っていた。オルメカの巨石人頭像を思わせるような大きな目でこちらを見返す様子は、舞踏というよりもむしろ古代からの儀式の担い手のようである。もっとも、そんな大仰な意味を本人が考えているわけでもなく、単に踊りの出番を待っているだけなのだろう。
2010年12月 メキシコ 人びと | |
男の子 衣装 ダンス 装飾 縁のある帽子 サアチーラ |
No
4941
撮影年月
2010年7月
投稿日
2010年12月09日
更新日
2025年09月05日
撮影場所
サアチーラ / メキシコ
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM