河回村は両班と呼ばれた支配階級の人びとの村だったところだ。大きくて立派な家々が立ち並んでいる。とある家の前に差し掛かると、門が半分だけ開いていた。そして、間からは中の様子が垣間見える。とはいっても、大したものは見えない。物干しロープが貼ってあって、ふきんだろうか、布が数枚干してあった。
観音開きの扉に視線を戻すと、漢字で書かれた札が貼ってある。左側には「立春大吉」と書いてあり、右側には「建陽多慶」と書いてある。これらは本来、立春のときに用いられるもので、韓国の伝統的な風習だ。立春大吉は立春を迎え吉運を祈願するという意味で、建陽多慶は春の訪れに感謝し喜ぶという意味になる。お金持ちも貧乏人も、願うことは同じなのかもしれない。
日本ではあまり見かけないものだと思っていたが、禅宗のお寺では「立春大吉」の札を使う風習があるようだ。なんでも単なる祈願ではなく厄除けなのだという。「立春大吉」は左右対称の漢字だけで書かれている。そのため、この札の貼ってある扉をくぐり抜けた鬼が振り返ると、同じように「立春大吉」と書かれてある。まだ鬼は扉の中に入っていないと思い違いして外に出ていってしまったという逸話があるのだそうだ。
鬼はそんなに頭悪いのかと思ってしまうけれど、それによって厄払いという効能がこの言葉に付加されることになったようだ。
2013年10月 建築 韓国 | |
安東 張り紙 扉 入り口 願い |
No
8022
撮影年月
2008年6月
投稿日
2013年10月29日
更新日
2024年02月04日
撮影場所
安東 / 韓国
ジャンル
建築写真
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM