大聖堂近くにある公園で、ひとりの男の子がブランコに腰掛けていた。まだ幼さの残る顔つきなのに、胸には十字架のペンダントが揺れている。キリスト教徒が多数を占めるフィリピンらしい装いだと妙に納得する。ルソン島北部の都市ビガンは、スペイン統治時代の街並みがそのまま残されており、世界遺産にも登録されている。石畳の道を馬車がカタコトと行き交い、観光客は古いコロニアル様式の建物を背景に写真を撮っているが、男の子にとってはそんな光景など日常の一部にすぎないのだろう。
ブランコは古びた木の板を鎖で吊るしただけの簡素なものだ。滑り台やジャングルジムが並ぶ都会の公園とは違い、むしろこの簡素さこそが場末の遊具らしい趣を漂わせていた。男の子は小さな体で全力を込めて漕いでいたが、その目線はなぜか遠くを見据えている。前を見ているようで、何も見ていない。子供らしい無邪気さよりも、何か思案を抱えているような顔つきだ。もっとも僕が勝手にそう感じているだけで、実際にはアイスクリーム屋の姿でも探していたのかもしれない。
2008年12月 人びと フィリピン | |
男の子 ネックレス ブランコ ビガン |
No
2269
撮影年月
2008年9月
投稿日
2008年12月03日
更新日
2025年08月30日
撮影場所
ビガン / フィリピン
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM