ダッカの街を歩いていると、ひっきりなしにサイクルリクシャーが行き交う。エンジンの音がないぶん、ガチャガチャとした金属の軋みとベルの音だけが響く。その数はざっと百万台ともいわれ、まさにバングラデシュの大動脈だ。リクシャーの車体はどれも派手で、原色と金色の洪水のようだ。側面には花や鳥、映画俳優や宗教的な図像が描かれている。これがいわゆるリクシャー・アートである。絵筆を握る職人たちは、路地裏の小さな作業場で昼夜を問わず彩色を続けるという。
歩道の端で立ち止まっていると、一台のリクシャーが目の前で止まった。運転席からのぞく男が、こちらをじっと見ている。幌の隙間から覗いた顔は、日に焼け、皺の刻まれた褐色の皮膚が光を吸い込んでいる。男は何かを言いかけたような表情を見せたが、結局、言葉の代わりに笑顔を残した。歯の欠けたその笑いは、どこか疲れていて、しかし不思議に明るい。
| 2013年11月 バングラデシュ 人びと | |
| サイクルリクシャー ダッカ 前歯 リクシャワラー 笑顔 |
No
8081
撮影年月
2009年9月
投稿日
2013年11月18日
更新日
2025年11月19日
撮影場所
ダッカ / バングラデシュ
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM