壁に黒くて重そうな扉が設けられていた。しっかりと閉じられている扉だ。表札も看板もないので、中にどのような空間が広がっているのかは外から分からない。個人の家の扉のような気もするし、同時に会員制のバーの類いの扉のような気もする。
ここ京島は第二次世界大戦時の空襲の被害が少なかった地域だ。そのため大正時代から昭和初期に建てられた長屋などが町工場が混在している。東京の下町らしい街並みが色濃く残っているところなのだ。しかしながら、そのようなエリアを歩いていて惹かれたのは写真の扉だった。ちょっと複雑な気分だ。
扉の中が気になるのであれば扉を開ければいい。そうすれば、すぐにでもその答えを知ることが出来るのだけれど、僕には開ける勇気はなかった。扉の近くで、誰かがやって来て僕の代わりに扉を開けてくれる人が来るのを待っていても、そのような人は誰もやって来なかった。
何も書かれていない扉を開けるのにはそれ相応の勇気がいる。ドラえもんのどこでもドアも扉の向こうがどこだか分からず、開ける度にドキドキしなければならないのであれば、それはそれで面白いけれど憧れる人はずっと少なくなるだろう。
2005年1月 建築 東京 | |
扉 入り口 京島 |
No
3
撮影年月
2004年11月
投稿日
2005年01月01日
更新日
2024年07月01日
撮影場所
京島 / 東京
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
CANON EOS 1V