モトカロに乗った親子はあっという間に通り過ぎていった

モトカロに乗った親子
モトカロに乗った親子

メキシコ南部の町テフアンテペックを歩いていると、後ろから軽快なエンジン音が近づき、二台のモトカロが僕を追い抜いていった。小型バイクの車体に荷台をくっつけたようなこの乗り物は、地元ではおなじみの足で、三輪タクシーと説明すれば分かりやすい。舗装の怪しい道でも器用に走り抜けるのが得意で、路線バスが入らない細い道を縫うように走る。

先頭の一台に目を向けると、荷台には若い母親と着飾った女の子が座っていた。母親は片肘を膝に置き、娘の肩に軽く手を添えている。女の子は真っ白なワンピースを着て、髪も丁寧に整えられているが、表情は華やかさとは正反対だった。どうやら僕に気づいたらしく、まっすぐに視線を向けてくる。だがその目は、これから遊園地に行く子の輝きではなく、これから注射を打たれる前の沈黙に近い。

モトカロは観光客には物珍しいが、地元の人々にとってはただの生活道具である。買い物帰りの荷物運搬、子供の通学、病院への送迎まで幅広くこなす。雨季にはシートの隙間から雨が吹き込むし、乾季には埃が舞い込むが、それでも使い勝手は悪くない。

ふと前方を見ると、もう一台のモトカロには老夫婦が乗っていた。後ろの親子と比べると、こちらは揺れにも動じず、道中を完全にくつろぎの時間として過ごしているようだった。僕は歩きながら、あの白いワンピースがこの先の目的地でどんな役割を果たすのかを考えたが、結局わからないままだった。

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ENGLISH
2012年6月 メキシコ 人びと
荷台 ワンピース 親子 テフアンテペック

PHOTO DATA

No

6522

撮影年月

2010年7月

投稿日

2012年06月12日

更新日

2025年08月12日

撮影場所

テフアンテペック / メキシコ

ジャンル

ストリート・フォトグラフィー

カメラ

CANON EOS 1V

レンズ

EF85MM F1.2L II USM

日本国外で撮影した写真

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