伝統衣装ジュラバを頭まで被り、カメラを向けられて驚きの表情でのけぞる年配の男性の姿

のけぞるジュラバを着た男
ジュラバを着た男

方向感覚を完全に失うほど細く入り組んだ、モロッコの古都であるフェズの旧市街を、あてもなくトボトボと歩いていた。この巨大な迷宮都市は、中世の時代に外敵の侵入を遅らせるために、意図的に複雑怪奇に設計されたものだ。そのため、一歩足を踏み入れれば、地図など何の役にも立たない。そんな路地の片隅で、道端にひっそりとしゃがみ込んでいる怪しげな男と行き合った。彼は何かを待つでもなく、ただそこに木石のように佇んでいた。

著者 :
地球の歩き方
発売日 : 2026-07-28

そのただ道端にしゃがみ込んでいる怪しげな男に、僕はカメラを片手にして不用意に近づいていった。すると、彼はまるで突如として目の前に刺客が現れたかのように、目を限界まで丸くして驚いた。そして、そのまま背後の薄汚れた壁に向かって、不自然な角度で大げさにのけぞったのである。深く刻まれた年輪のような皺の中に、ぽかんと半開きになった口と、白黒の画面で際立つ驚愕の眼差しが、なんともユーモアな調和を見せている。

その驚愕の表情を浮かべて壁にのけぞる彼が身にまとっているのは、このマグレブ地方に生きる人々が愛用する伝統衣装のジュラバだ。ウールや綿で仕立てられたこのフード付きの長袖ローブは、容赦ない直射日光や砂嵐を避けるために作られた。この尖った特徴的なフード部分は「コブ」と呼ばれ、実は買い物の品や小物を放り込んでおくポケット代わりにもなる。さらにこのジュラバは、あの世界的なSF映画『スター・ウォーズ』に登場するジェダイの騎士たちが羽織るローブのモデルになったとも言われている。そのため、この路地を行き交う人々を眺めていると、まるで銀河系のどこか辺境の惑星に迷い込み、引退したジェダイたちに取り囲まれているような、おかしな幻覚に囚われてしまうのだ。

そのジェダイの騎士を思わせる高潔なはずのジュラバを被った彼だが、僕の四角い箱にすぎないカメラ一つにここまで激しく腰を抜かすのだから、フォースの神秘など微塵もなさそうである。僕は彼に謝るでもなく、心の中で「フォースと共にあらんことを」と無駄な念じ方をしながら、そそくさとその場を立ち去った。

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ENGLISH
2010年6月 モロッコ 人びと
民族衣装 フェズ 男性 驚き

PHOTO DATA

No

4210

撮影年月

2009年12月

投稿日

2010年06月13日

更新日

2026年07月16日

撮影場所

フェズ / モロッコ

ジャンル

ポートレイト写真

カメラ

CANON EOS 1V

レンズ

EF85MM F1.2L II USM

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