コンクリートの照り返しにすっかりうんざりし、入場料を支払って新宿御苑へ逃げ込んだ。本来、公園というものは誰にでも開かれた無料の場所であってほしいものだが、都心で手っ取り早く静寂を買うには妥当な出費かもしれない。芝生が広がる斜面に出ると、あちらこちらにこんもりと丸く剪定された立派な木々が点在していた。強い日差しを受けて、それぞれの木の根元には濃い影が落ちている。
その濃い影が落ちている木の根元に目をやると、逃げ込んできた人間たちがちまちまと寛いでいるのが見えた。このだだっ広い芝生の中で、わざわざ狭い日陰に身を寄せ合っているのである。強い日差しを避けたいという切実な願いの証左に、広々とした日向で寝転がっているような物好きな人間はただのひとりもいなかった。人間という生き物は、いざとなれば虫けらのように葉っぱの下に隠れる習性があるらしい。そう考えると、点在する木陰を陣取ってちまちまとピクニックをしている彼らの姿も、なんだか滑稽で少しばかり楽しい気分になってくる。
その少しばかり楽しい気分で斜面から視線を上げると、木立の向こうに巨大な高層ビルがそびえ立っているのが見えた。先端が尖った奇妙な形をした、NTTドコモ代々木ビルである。いかにもエンパイアステートビルを模したような立派な外観をしている。しかし、実は上半分には窓もフロアもなく、ただ巨大なアンテナ設備をパネルで隠しているだけという無駄な雑学を僕は知っている。周囲から抜きん出て高いそのビルは、通信機器の塊が日陰でうごめく僕たちを無機質に見下ろしているだけなんだけど、何も知らなければ苑内で寛ぐ人びとを温かく見守っているように見えるかもしれない。
| 2006年6月 人びと 東京 | |
| 日陰 影 新宿 新宿御苑 木 |
No
447
撮影年月
2006年5月
投稿日
2006年06月11日
更新日
2026年05月11日
撮影場所
新宿 / 東京
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
CANON EOS 1V