女性はひとりでベンチに腰掛けて読書していた

代々木公園で読書する若い女性
代々木公園で読書

東京の真ん中にある代々木公園を、当てもなく歩いていた。ここは戦前には陸軍の練兵場であり、戦後は米軍の居住区であるワシントンハイツを経て整備されたという歴史を持つ。そんなきな臭い過去など微塵も感じさせないほど、今の園内には平和な木々が生い茂っている。意味もなく歩き回って少しばかり足が疲れたので、どこか座る場所はないかと見回してみた。この公園には、ところどころに木製のベンチが設置されている。疲れた人間がちょっと休憩するには、とても便利でありがたい代物だ。

著者 : 馬場正尊
学芸出版社
発売日 : 2024-09-19

そのとても便利でありがたいベンチのひとつに、若い女性がひとりで腰を下ろしていた。彼女は手になにやら本を持っていて、ベンチの上に片膝を立てながら読書に没頭している。写真の奥の方を見れば分かる通り、すぐ後ろの広場では連中がキャッチボールだか野球だかをして騒いでいるのだ。それなのに、彼女はボールが飛んでくるかもしれないという危機感も持たず、ただ活字の世界に浸りきっている。初夏の風に吹かれながら、木漏れ日の下で本を開くのは、さぞかし心地良いに違いない。

そのさぞかし心地良いであろう公園での読書という発想は、この女性の姿を見るまで僕の頭の中にはちっとも存在しなかった。本を読もうと思い立った時は、だいたい自然と近所の薄暗い喫茶店に足が向いていたからだ。何せ僕にとって、苦い珈琲と煙草の煙は、読書をする時に絶対に欠かせない必須の小道具である。しかし、こうして見知らぬ他人が木陰で実に気持ちよさそうにページをめくっているのを見ると、たまには煙草を我慢して青空の下で文字を追うのも悪くないかもしれないと思えてくる。

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ENGLISH
2007年10月 人びと 東京
ベンチ 原宿 読書 日陰 代々木公園

PHOTO DATA

No

1159

撮影年月

2007年9月

投稿日

2007年10月23日

更新日

2026年05月11日

撮影場所

原宿 / 東京

ジャンル

ストリート・フォトグラフィー

カメラ

CANON EOS 1V

日本国内で撮影した写真

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