原宿を歩いていると、群れをなした少女たちの中に、ひときわ異彩を放つ女性がいた。彼女の装いは「ロリータ」と呼ぶにはあまりに尖っており、「パンク・ファッション」かと問われれば、それもどこか違うような気がする。分類不能の存在というものがあるなら、彼女はまさにその代表格だった。左目には白いレンズを入れ、黒目を消し去っている。視界はほとんどないはずだが、視線だけは異様に強い。片目が白く濁った彼女に見返されると、まるでこちらの魂が透かし見られているような気がした。
唇の端には黒い太陽のような模様が描かれている。何を意味するのかは分からないが、もしかすると自己表現という名の呪文なのかもしれない。原宿では、誰もが何かしらの呪文を唱えている。ファッションとは本来、自己防衛の一種であり、他者と自分を区別するための仮面でもある。十七世紀のヨーロッパ貴族が白粉を厚く塗ったのも、鎧を脱いだ代わりに身につけた社会的武装だった。そう考えると、この女性の装いもまた立派な戦闘服に違いない。
2007年7月 人びと 東京 | |
女の子 原宿 口唇 パンク |
No
980
撮影年月
2007年5月
投稿日
2007年07月25日
更新日
2025年10月07日
撮影場所
原宿 / 東京
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
CANON EOS 1V