壁際で顔を強張らせてカメラを見つめる、悪魔のTシャツを着た男の子

怯えた表情の男の子
怯えた表情の男の子

インドネシアのバリ島といえば、神々の棲む島だの地上の楽園だのと、世間の観光客は浮かれ騒いでウブドの森や南部のビーチに群がるのが常である。しかし、僕はそんなお仕着せのリゾート地ではなく、州都であるデンパサールの埃っぽい路地をウロウロと歩き回っていた。ここはバリ州の行政や経済の中心地であり、見どころといえばローカルな市場と凄まじい渋滞くらいのもので、カメラを提げた物好きな外国人などそうそう歩いてはいない。

その物好きな外国人である僕が、不意に通りで出会ったのが、石積みの壁際にひとりで立っていた男の子である。見知らぬ僕が突然声を掛け、黒光りするカメラを向けたものだから、彼はすっかり顔を強張らせてしまった。無理もない話だ。彼は壁に背中をピタリと張り付け、極度の緊張を孕んだ面持ちのまま、ひどく警戒心に満ちたギョロ目でこちらをねめつけている。バリのヒンドゥー教では、子供は神からの授かりものとして神聖視され、生後しばらくは悪霊から守るために地面に足をつけることすら禁じられるという立派な風習があるそうだが、いま僕の目の前で地面を踏みしめて身構える彼は、神聖さというよりはただ単に「厄介なよそ者に捕まった」という露骨な不快感を浮かべているだけだ。

その露骨な不快感を、言葉以上に饒舌に語りかけてくるのが、彼が着ているヨレヨレのTシャツである。そこには、牙を剥き出しにしてこちらを威嚇する、いかにも悪魔的なキャラクターの顔がでかでかとプリントされていた。「DEVILS」と物騒な文字が躍るこのイラストが、警戒心を隠そうともしない男の子の胸の内をあまりにも見事に代弁していた。

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ENGLISH
2009年9月 インドネシア 人びと
男の子 デンパサール 怯えた顔 丸い瞳

PHOTO DATA

No

3167

撮影年月

2009年6月

投稿日

2009年09月12日

更新日

2026年03月13日

撮影場所

バリ島 / インドネシア

ジャンル

ポートレイト写真

カメラ

CANON EOS 1V

レンズ

EF85MM F1.2L II USM

日本国外で撮影した写真

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