ルソン島北部の山々にティングラエンというエリアがある。観光地図にはまず載らないような場所で、外国人旅行者などめったに足を踏み入れない。だからこそ僕の姿は珍獣のように映るらしく、道を歩いていると村のこどもたちがどこからともなく現れた。多いと十人以上の子どもたちが集まってくる。僕は数えるのを早々に諦め、ただ取り囲まれるがままに歩く。目を輝かせて近づく者もいれば、半開きの口でこちらを凝視する者もいる。警戒か興味か判然としない表情だが、いずれにせよ僕が特別扱いされていることだけは理解できた。
ちなみに、ルソン島は日本とも歴史的につながりが深い。戦時中には多くの日本兵が駐屯し、村々の地名の発音に苦労したという記録もある。そんな歴史の影をよそに、目の前のこどもたちは実に現代的な好奇心で僕を見つめている。カメラのレンズに映る彼らの顔は真剣そのもので、まるでこちらを値踏みしている商人のようだ。村の犬ですら吠えるのをやめて見物に加わる始末で、僕は一瞬、自分がサーカス団の新入りにでもなったかと錯覚した。
2009年1月 人びと フィリピン | |
男の子 好奇心 口 ティングラエン |
No
2394
撮影年月
2008年9月
投稿日
2009年01月15日
更新日
2025年08月20日
撮影場所
ティングラエン / フィリピン
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM