若いトライショー運転手は挑むような視線を返してきた

若いトライショー運転手
オランダ広場近くで客待ちしていたトライショーの運転手

マレーシアの古都マラッカには、オランダ広場といういかにもな名前の観光名所がある。その名が示す通り、かつての植民地時代に建てられた赤茶色の建造物が残っている場所だ。もともと14世紀に建国された王国であったこの街は、海上交通の要衝であったがゆえに、ポルトガル、オランダ、イギリスと次々に西洋列強の支配を受けてきた。さらには第二次世界大戦中に日本軍に占領されるなど、なんともせわしない歴史を背負わされている。歴史に翻弄された街といえば聞こえはいいが、要するに都合のいいようにあちこちから搾取されてきたということだ。

その都合のいいように搾取されてきた歴史の舞台である広場には、今は別の意味で他人から搾取しようとする連中が群がっている。観光客目当ての商売人たちである。歴史的建造物の前で記念写真を撮ろうと浮かれる旅行者を狙って、土産物屋や客引きが隙あらば小銭を巻き上げようと手ぐすねを引いているのだ。どこの国の観光地でも見られる、ひどくありふれた光景である。僕もまた、そんな客引きの格好の標的として、うんざりするほど声をかけられながら広場を歩いていた。

そのうんざりするほど声をかけてくる客引きの中の一人が、写真の帽子をかぶった青年である。彼はトライショーと呼ばれる派手な自転車タクシーのサドルに跨り、観光客を乗せて街を案内するのを生業としているらしい。暇そうにしているところにカメラを向けてみると、なぜかひどく挑発的な、あるいは不機嫌そうな視線をこちらに返してきた。客を乗せる商売のくせに、愛想笑いのひとつも浮かべないその態度は、ある意味で清々しい。おまけに彼の乗るトライショーは、いかにも南国らしい造花でこれでもかと無駄に飾り立てられている。その不機嫌な顔つきと、過剰にファンシーな花の装飾の組み合わせがひどく滑稽だった。

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ENGLISH
2009年4月 マレーシア 人びと
サイクルリクシャー 縁のある帽子 鋭い視線 マラッカ リクシャワラー トライショー 青年

PHOTO DATA

No

2699

撮影年月

2009年1月

投稿日

2009年04月19日

更新日

2026年04月26日

撮影場所

マラッカ / マレーシア

ジャンル

ポートレイト写真

カメラ

CANON EOS 1V

レンズ

EF85MM F1.2L II USM

日本国外で撮影した写真

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