ミャンマーの古都であるピイの少し寂れた町外れをトボトボと歩いていた。このあたりの民家を眺めてみると、どれもこれも見事な高床式住居ばかりである。東南アジアの容赦ない高温多湿な気候に対応するための知恵だ。床を高くすることで通気性を良くし、雨季の洪水や地面からの湿気、さらには地を這う不快な虫を防ぐ実用的な目的があるらしい。しかし、面白いのはここからだ。本来なら単なる風通しのための空洞であるはずの床下の空間が、住人たちの格好のリビングルームとして大々的に活用されているのである。
その住人たちの格好のリビングルームとして大々的に活用されている床下の暗がりに目を凝らしながら歩いていると、そこかしこでゴザを敷いて気楽にくつろいでいる人々の姿を見かける。通りかかったある一軒の家の床下でも、やはり住人がのんびりと時を過ごしていた。ゴザの上に座っているのは、若い母親と、その膝の間にすっぽりと収まった幼い男の子の二人だ。彼らは怪しげな余所者である僕をじっと見つめていた。その二人の顔をよく見ると、頬や額に何やら白い泥のようなものが熱心に塗りたくられている。これは「タナカ」と呼ばれる現地の伝統的な化粧品だ。ミカン科の木をすり潰して水で練ったもので、日焼け止めや肌を涼しく保つ効果がある。こんな小さな子どもであっても、家にいるときから当たり前のように塗るものらしい。
薄暗い床下の陰影の中に腰を下ろした親子の姿は、まるで額縁に収まった古い絵画のようでもある。母親の膝の上でちょこんと座る男の子は、タンクトップ姿でどこか所在なさげだ。ただ、日陰の涼しい場所を見つけて一日中ぼんやりと座っていられる彼らの贅沢な退屈っぷりが、羨ましくてならなかった。
| 2010年10月 ミャンマー 人びと | |
| 親子 ピイ リラックス タナカ |
No
4655
撮影年月
2010年3月
投稿日
2010年10月02日
更新日
2026年07月09日
撮影場所
ピイ / ミャンマー
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM