エーヤワディー川の川辺をあてもなく歩いていると、女の子と、赤ん坊を抱えた男の子がこちらに近づいてきた。合わせて三人、正確に言えば子どもたちが三人である。彼らは躊躇というものをほとんど持ち合わせていないらしく、まるで蜜に引き寄せられるミツバチのように一直線にやって来た。この場合の蜜は、僕の首から下がっているカメラだった。ミャンマーの地方都市、ピイでは、外国人も珍しいが、黒くて大きなカメラはそれ以上に珍しいらしい。
三人はどうやら写真を撮ってもらいたいようだった。頼まれたわけでもないのに、そうと分かってしまうのが不思議である。カメラを構えると、三人とも実に素直にこちらを見つめてくる。チェック柄のシャツを着た女の子は、少し胸を張るようにして誇らしげに微笑んだ。上半身裸の男の子は、笑っていいのかどうか迷っているようで、結局は照れたような表情になった。赤ん坊は何が起きているのか理解できていないらしく、帽子を傾けたまま、きょとんとした顔でレンズを見ている。考えてみれば、写真に撮られるという行為そのものが、かなり抽象的な出来事だ。自分の姿が紙や画面に残るなどという発想は、ある程度の年齢と経験がなければ想像しにくいに違いない。
| 2015年4月 ミャンマー 人びと | |
| 赤ちゃん 男の子 帽子 女の子 ピイ タナカ 三人組 |
No
9165
撮影年月
2010年2月
投稿日
2015年04月07日
更新日
2025年12月20日
撮影場所
ピイ / ミャンマー
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM