伝統的な編笠をかぶった女性が道端で寛いでいた

寛ぐ編笠の女
道端で見つけた円錐形の編笠

ベトナムの旧名サイゴン、現在のホーチミン市の路上を、僕はさして目的もなく彷徨っていた。この街の歩道というものは、歩くための場所ではなく、椅子を並べて茶を飲んだり、あるいは商売をしたりするための「私的な広場」であるらしい。ふと見れば、道端に置かれた粗末な折り畳み椅子に、一人の女性が腰を下ろして、実になんともゆったりとした体で寛いでいた。彼女は、この国特有の「ノンラー」と呼ばれる円錐形の編笠を深く被っており、その表情を窺い知ることはできない。ただじっと、往来を流れる無数のバイクを眺めているようであった。

このノンラーという編笠は、ラタニアの葉を巧みに編んで作られるそうで、単なる日除け以上の実利を備えている。急な雨には傘となり、時には市場での買い出しを放り込む籠にも化けるという。経済が目覚ましく発展し、若者たちの服装が西欧化していく中でも、この笠だけが頑固に生き残っているのは、単なる伝統への固執ではなく、この容赦ない日差しに対する、これ以上ない「合理的回答」だからなのだろう。この国の一人あたりのコメの消費量は世界でもトップクラスだというが、その稲作を支えてきた知恵が、アスファルトの道端でもなお、現役の道具として機能している。

ホーチミンをGoogleマップで見る
 でコメントする
ENGLISH
2014年7月 人びと ベトナム
椅子 編笠 ホーチミン市 リラックス

PHOTO DATA

No

8646

撮影年月

2009年3月

投稿日

2014年07月13日

更新日

2026年03月09日

撮影場所

ホーチミン市 / ベトナム

ジャンル

ストリート・フォトグラフィー

カメラ

CANON EOS 1V

レンズ

EF85MM F1.2L II USM

日本国外で撮影した写真

すべての撮影地を見る »

被写体別のカテゴリ