スリランカの最大都市、コロンボの胃袋とも云うべきペター地区を歩けば、そこは商業地区というよりは、一種の巨大な混沌の坩堝であった。道の両脇には得体の知れない乾物や布地を扱う問屋が隙間なく並び、その間を縫うようにして、大勢の労働者たちがひしめき合っている。この地区の朝は、唸るような怒号と、鼻を突くスパイスの匂いで幕を開けるらしい。ここでは、トラックから溢れんばかりの荷物を下ろす作業がいまだに人力で行われており、文明の利器であるフォークリフトなどは、この迷路のような路地には居場所がない。その結果、このペター地区には、驚くほど大勢の荷下ろし専門の労働者たちが、獲物を待つ猟師のようにそこかしこにたむろしているのである。
ふと見れば、年季の入った壁際に、上半身を剥き出しにした男が一人立っていた。彼の体躯は、毎日数えきれないほどの重い荷物を背負い、運び続けてきた結果、余計な脂肪を一切許さぬ彫刻のごとき引き締まりを見せている。スリランカでは、伝統的に「ナッタル」と呼ばれる独特の荷運び文化があり、彼らのような熟練の運び手は、驚くべき重量を頭や肩に乗せて、群衆の中をひらりと通り抜けていく。男は僕と視線が合うと、剥き出しの肌とは対照的な、清潔なほどに白い歯を見せて、ふっと微笑んだ。
| 2008年6月 人びと スリランカ | |
| コロンボ 労働者 ネックレス 上半身裸 笑顔 歯 |
No
1734
撮影年月
2008年3月
投稿日
2008年06月14日
更新日
2026年03月09日
撮影場所
コロンボ / スリランカ
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM