ミャンマー中部の町、ピイの路地を歩いていると、女の子が数人で遊んでいた。竹柵の前で何をするでもなく立ち話をしているだけなのだが、その時間の使い方がいかにも路地らしい。女の子は髪を頭の上で器用に結い、頬にはタナカが塗られている。ミャンマーではごく当たり前の光景で、日除けや肌の保護のために老若男女が顔に塗る。原料はタナカの木を削った粉で、ほんのりとした香りがするらしいが、他人に顔を近づけて嗅いで確かめるほどの勇気はなかった。
初めてミャンマーを訪れたとき、タナカは祭りでもないのに顔に絵を描いているように見えて、正直なところ少し珍妙だった。しかし人間というのは勝手なもので、滞在が長くなるにつれて、その違和感は驚くほど速やかに消えてしまう。異国の風習も、毎日目にしていれば単なる日常の一部になる。珍しいのは対象ではなく、こちらの慣れない視線の方なのだと、後になって気づく。
そんなことを考えながらカメラを構えていると、タナカを頬に塗った女の子が、今度はじっとこちらを見てきた。彼女にとっては、見知らぬ外国人が路地に立って箱のような機械を向けている方が、よほど奇妙に映ったに違いない。
| 2010年9月 ミャンマー 人びと | |
| 頬 女の子 ピイ タナカ |
No
4646
撮影年月
2010年3月
投稿日
2010年09月30日
更新日
2025年12月12日
撮影場所
ピイ / ミャンマー
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM