インドの西海岸に位置するムンバイは、海沿いの街としては驚くほど喧噪に満ちている。潮風と排気ガスが入り混じり、空気そのものが少し埃っぽい。海沿いの道を歩いていると、遊んでいたひとりの男の子が僕の姿を見つけた。どうやら僕の手に下がった一眼レフが気になったらしい。
彼は近づくなり、まるで審査官のように僕を見つめてきた。正確に言うなら、「じっと見てくる」。あまりにも真正面から見据えられると、こちらの方が何か悪いことでもしたような気分になる。眉をひそめ、口を少しすぼめた表情は、まるで世界の不条理すべてを疑っているようだった。ムンバイの子どもたちは、どうしてこうも大人びた顔をしているのだろう。
写真を撮っていいのか悪いのか、判断がつかないまま時間が過ぎた。けれど、結局はシャッターを切った。彼は逃げもせず、表情も変えず、レンズの奥をのぞき返してきた。その視線は、まるで「撮るなら撮ればいいさ」と言っているようだった。インドでは、カメラを向けると喜んでポーズを取る子も多いが、この少年のように微動だにせず見返してくる者もいる。
| 2011年2月 インド 人びと | |
| 男の子 顔 しかめっ面 ムンバイ |
No
5141
撮影年月
2010年9月
投稿日
2011年02月03日
更新日
2025年12月04日
撮影場所
ムンバイ / インド
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM