マニラの旧市街、イントラムロスを歩いていると、狭い路地の陰から子供たちの笑い声が聞こえてきた。夕方の湿った風が漂う中、石畳の上で遊ぶ子供たちは、汗にまみれ、埃を跳ね上げながら駆け回っている。その中で、ひとりの男の子が妹らしき小さな女の子を抱いて立っていた。彼女の瞳は驚くほど丸く、まるでカメラのレンズそのもののように光を反射している。
僕がカメラを構えると、女の子は途端に眉間に皺を寄せ、何かを疑うような目でこちらを見た。何も悪いことをしているつもりはないのだが、どうも気に入らなかったようだ。撮られることに慣れていないのか、あるいは僕の顔がよほど胡散臭かったのかもしれない。対照的に、男の子の方はにやりと笑い、妹の不機嫌を面白がっているようだった。
イントラムロスはスペイン統治時代に築かれた要塞都市で、今も当時の石壁や教会が残っている。観光地として整備されているが、路地裏には庶民の暮らしが息づいている。学校帰りの子供たちが制服のまま裸足で走り回り、家々の軒先では母親たちが洗濯物を干している。文明と混沌、信仰と生活が同居するのがこの街の特徴だ。
| 2008年11月 人びと フィリピン | |
| 瞳 しかめっ面 女の子 マニラ 姉弟・兄妹 |
No
2223
撮影年月
2008年9月
投稿日
2008年11月19日
更新日
2025年11月06日
撮影場所
イントラムロス / フィリピン
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM