ホーチミン市のチョロン地区を歩いていると、町の時間が少しゆっくり流れているように感じる。朝から開いている果物店、軒先に吊るされたランプの陰、そして店先に腰を下ろして話し込む人々。そのひとつひとつが、都市の喧騒のすき間を縫って生まれた、日常の風景だった。
ある店の前で、年配の女性が低いスツールに腰をかけていた。隣には何脚かのプラスチック椅子、扉の奥にはタイル張りの床、そして鏡の上には信仰の対象と思われる小さな像が飾られていた。そこは商店というよりも、住居と店舗が一体となったような場所だった。
女性は友人と何かを話していたらしい。ふとした瞬間、何かに驚いたのか、大きく口を開けて反応を見せた。その表情には戸惑いも誇張もなく、まるで子どものような純粋さがあった。
年齢を重ねても、日々の暮らしのなかには「予想外」が潜んでいる。目にしたもの、耳にしたことに、素直に驚く。それは歳月が削ぎ落としていった感情ではなく、むしろ長い時間のなかで培われた人間らしさなのかもしれない。
2009年6月 人びと ベトナム | |
ホーチミン市 老婆 驚き |
No
2871
撮影年月
2009年3月
投稿日
2009年06月09日
更新日
2025年06月16日
撮影場所
ホーチミン市 / ベトナム
ジャンル
スナップ写真
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM