ピイの町はゆっくりとした時間が流れている。日陰を求めて人々が軒先に集まり、風が通り抜けるたびに木の葉がかすかに揺れた。
そんな通りの一角、道端に置かれた椅子にひとりの年配の女性が腰掛けていた。何かをしているわけではなく、ただ静かに座り、往来を見つめている。表情には微笑みがあり、それは決して誰かに向けたものではなく、日常そのものに染み込んだ穏やかな喜びのようだった。
誰もがこの町でそうするように、彼女もまた何かを待っていたのかもしれないし、何も待っていなかったのかもしれない。たぶん、どちらでもよかったのだろう。午後の光の中、彼女の存在そのものが風景の一部になっていた。
カメラを持って近づくと、彼女は少しだけこちらに視線を向け、やがてにこやかにうなずいた。写真を撮ってもいいかと尋ねた言葉が、通じていたかどうかは分からない。でもそのとき、彼女の表情には戸惑いも警戒もなく、むしろ「まあ、いいでしょう」という、どこか優しい寛容さがあった。
2010年10月 ミャンマー 人びと | |
ニコニコ笑う 白髪 老婆 ピイ リラックス |
No
4702
撮影年月
2010年3月
投稿日
2010年10月13日
更新日
2025年06月14日
撮影場所
ピイ / ミャンマー
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM