石神井池の畔に長い水網を持った男の子が立っていた

練馬にある石神井公園には三宝寺池と石神井池というふたつの池があるものの、その成り立ちはかなり違う。国の天然記念物も群生している三宝寺池が湧き水を源泉としているのに対し、ボートに乗ることもできる石神井池は一帯が風致地区に指定された際に武蔵野の景観を保護する目的で人工的に作られたもの。つまり三宝寺池がメインで、石神井池はその補助的な位置づけといえるだろう。メインである三宝寺池はスティーブ・ジョブズが好きだった川瀬巴水の木版画の画題にもなっている。

そうはいっても園内を散策する人たちにとって、違いはさほど大きなものではない。どちらの水辺にものどかな雰囲気が漂っていて、散策するのにちょうどいい。この日も天気が良く、大勢の人が池の畔に繰り出していた。中には長い水網を手にして水際に立つ男の子もいる。穏やかな時間が流れていた。澄んだ空の下に広がる緑が水際に迫る光景は、100年近く前に川瀬巴水が描いた木版画の光景と何ら変わっていないように見えた。

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