微笑みかけてくれた女性はバラの模様の付いた服をまとっていた

露天市の両端にはびっしりと露天商が並んでいた。商売に適した場所は既に露天商に占有されていた。でも、この露天市で商売をしようと思っている人はまだまだいるようで、道の端にある場所を確保できなかった人は道の真中で商売をしている。

買い物客に混じって市場の中を歩いていると、突然目の前に赤いプラスチック製の椅子が現れた。気もそぞろに歩いていたら、そのままぶつかってしまいそうだった。そして、椅子の向こう側に女性が腰を下ろしていた。椅子の上には金属製の大きなトレイが載せられていて、その上にビニール袋が並べられている。この女性も道の端の場所を確保できなかったので、通路になっている道の真中で商売をしているのだった。

女性が纏っている赤い服には幾つもバラの模様が描かれている。僕が気がつくのと同時に、女性も僕に気がついた。僕のことを眺めながら優しく微笑んでいる。でも、僕にはこの女性が何をここで販売しているのかは分からなかった。何がビニール袋に入れられていたのだろう。

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