刺青を入れた男がにこやかな顔で近づいてきた

バゴーには観光名所になっている仏塔が幾つもある。そこでは旅行者を見かけたけれど、町の中心部を歩き回っていても観光客の姿を見かけない。ほとんどの旅行者はガイドブックに記載されている仏塔にしか興味がないのかもしれない。

賑わっているとはいえ、町の中心部に特筆すべき観光名所はない。お店は普通に営業していて、地元の人たちがのどかな空気の中をのんびりと行き来しているだけ。僕はそのような光景が好物だけれど、興味のない人にとってはどうでもいいものなのかもしれない。

僕も地元の人にならってのんびりと歩いていると、ひとりの男が近づいてきた。緑のタンクトップを着ている男の体にはあちこちに刺青が入っていた。怖そうな雰囲気もあるけれど、顔はにこやかだった。おそらくカメラを持って歩いている外国人に興味を持ったに違いない。男が目の前に立ち止まるのとほぼ同時に僕はカメラを男に向けた。そして男が何かを発する前に先手を撮ってシャッターを切った。

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